消費税個別対応方式を考える

2017年09月07日

消費税の計算は複雑です。売上規模が大きくなった場合には、消費税は個別対応方式と一括比例配分方式のどちらかを選択することになりますが、さまざまな注意点があります。その辺り、坂上に聞きました。


 
━━━今日はよろしくお願いします。消費税の10%への税率アップの時期が近づいてきました。
よろしくお願いします。安倍政権に変わってから、アベノミクスなど、いろいろな政策アイディアが出されており、私たちも会計、税務でいろいろな点で注視しています。

━━━私たち一般消費者にとっては、消費税率の引き上げはとても大きなトピックです。 そうですね。消費税率の引き上げは、一般消費者の皆さんにも大きな影響がありますが、企業経営者にとってもいろいろな面で影響が大きいですね。

━━━どういう影響が考えられますか。
新聞などでも大きく言われていますが、中小企業は仕入に係る消費税分を売上に転化することが難しい。景気が上向いているとはいえ、消費者の給与が上り始めるまでは、最終製品の値段はそれ程上げられないのは事実です。そんな中で、中小企業は大きな価格競争にさらされている訳ですから、仕入で払った分の消費税を売上で回収するといのは、より困難になって来ます。    ━━━消費税率アップの前に、いろいろな消費税に関する改正もあったようです。 日本の消費税制度は、「申告納税」を原則にしている為、どうしても「益税」が発生してしまいます。その益税を少しでも減らし、消費者が払った消費税を国庫にきちんと入る仕組みに整えていくために、いくつかの改正がありましたね。   ━━━具体的に教えてください。 影響の大きな改正で行くと、免税事業者の判定を基準期間だけでなく、全事業年度の上半期(6ヶ月)で判定する方法が新設されました。この改正は主に創業したばかりの会社に影響があります。今までは、基準期間が発生する創業第3期までは多くの会社では消費税は納税義務はありませんでした。 でも、この改正により、創業第2期の会社でも、第1期の売上高・人件費によっては課税事業者になり得る可能性が出てきました。かなり大きな変化ですね。他にはありますか。 もう一つは、年間の課税売上高が5億円を超える事業者については、今までは課税売上割合が95%以上であれば、仕入にかかった消費税の全額を仕入税額控除することができましたが、近年の改正により、課税売上割合に応じた部分のみの控除を要請されることになりました。   ━━━どういうことですか? 消費税は売上と対応関係にあることにより、仕入に係る消費税を控除することができます。でも、非課税売上と関係にある消費税を仕入税額控除してしまうと、その分は益税となってしまう訳です。なので、その分については控除しないことにする、ということで、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」が準備されています。

━━━どう違うのですか? 一括比例配分方式は、仕入にかかった消費税額の全額を課税売上割合で按分する方法です。 一方の個別対応方式は、仕入取引を一件ずつ売上との対応関係で区分し、課税売上と対応する仕入についてのみ仕入税額控除の対象としていく方法です。

━━個別対応方式は、ちょっと面倒な感じがしますが・・・。 その通り、かなり手間がかかります(笑)しかも、売上との対応関係をどう考えるか、迷う部分も多く、実際の企業現場で行うためには、事務担当者はそれなりに勉強していかないといけないですね。

━━━そんなに大変なら、一括比例配分方式で充分と考える会社の多いのではないでしょうか。 そうですね(笑)でも、実は一括比例配分方式より、個別対応方式の方が仕入税額控除額が多く計算されることが圧倒的に多いのも事実です。なので、売上高が大きい会社は個別対応方式に挑戦してみると良いかもしれませんね。ちなみに、一括比例配分方式を採用した場合、次の年も自動的に一括比例配分方式を採用しなくてはなりません。翌年度に工場建設など、大きな設備投資を考えているならば、個別対応方式を選ぶことをお勧めしたいですね。

━━━個別対応方式で、難しい部分はどうしたら良いとおもいますか? 国税庁のホームページや、税務署の電話相談に聞けば教えてくれます。また、私たちエスエス会計も、もちろんお手伝いします。税理士はこういう時に力になれる、大きなツールだと思っていただけたら、とても嬉しいですね。

━━━納税額は、できたら抑えたいものですから、がんばってみるのも良いかもしれませんね。本日はどうもありがとうございました。
 


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